古い机の上のMacとiPhone

【そんなわけない!】地方で悠々自適に仕事ができるのは1%に満たないトップクラスのクリエイターのみ…

【そんなわけない!】地方で悠々自適に仕事ができるのは1%に満たないトップクラスのクリエイターのみ…

古い机の上のMacとiPhone

まだまだ増え続けけるイケダハヤト氏の高知移住に関する賛否両論ブログ記事。私でも、東京から愛媛に田舎にUターンすることを決めた時のまわりの反応は賛否両論ありましたが、それとは比べ物にならない多くの意見が、地方から東京に出た人、東京から地方に移住して人、イケダ氏の移住先の高知に元々住んでいる人、様々な方の意見や考えをこの機会に知ることができて、Uターンクリエイターとしては大変参考になっています。

しかし、そろそろ意見も出揃った感があるのと、私もこの話題に乗っかった記事も書いたので、そんなに追っかけて見ることもないと思っていた矢先、BLOGOSの「イケダ君への地方出身者からのお節介」という記事の締めの文に

地方で悠々自適に仕事ができるクリエイターは、トップクラスのクリエイターだろうね。クリエイターもピンキリで、一流といわれる人は全体の1%にも満たないと思う。99%のクリエイターは、地方に移住したら仕事は激減だろうね。私も含まれる99%のその他大勢のクリエイターは、砂糖に群がる蟻のごとく、東京を始めとした大都市に群がるしかないと思う。

という、実際に地方の別にトップクラスのクリエイターなわけではない自分としては、触れないわけにはいかない、とんちんかんな文章があったので、東京から地方へ移住したクリエイターのリアルな意見を書いておきます。

まずは肯定的に読み取ってみる

私が愛媛に戻る際も、1番最初に心配したのは仕事があるのか、ということでした。そして、愛媛に移住して成功しているデザイナーの方についても調べたりしましたし、高知に移住したデザイナーの方のトークショーも聞きに行きました。そして、思ったのはどちらの方もトップクラスのクリエイターだということです。地方だから通用するというわけではなく、勿論、東京でもトップクラスの方だからこそ、地方でも成功されているのだと思います。

つまり逆にいうと、そうでもないクリエイター(上の文章でいうところの99%のクリエイター)は、地方は東京に比べると仕事は圧倒的に少ないですし(うちの市にはデザイン事務所がそもそもありません)、ハローワークで愛媛のデザイン事務所の求人を見ても驚く程安いので、苦労することは確かでしょう。東京にいれば良かったと思うかもしれませんし、実際に東京に戻るクリエイターもいるでしょう。そういう意味ではこの文章の言いたいことは理解できます。

間違っているのは地方でも仕事ができるのはトップクラスのクリエイターという点

これは完全に違います。では地方でやっていけるのはどのようなクリエイターか、私はこう考えます。

  • 場所に依存せず収入が得られるクリエイター
  • 地方に移住することにメリットがあるクリエイター

1つずつ見ていきましょう。まずは、

場所に依存せず収入が得られるクリエイター

これは自分を例に出すのが良いと思います。昨日もサバイブログで5月の売上報告を書きましたが、愛媛に戻ってフリーランスになって5ヶ月。まだ1度も地元の方と仕事をしたことはありません。売上の全てはクラウドソーシングと、東京や他の地方の友人や知人からの仕事です。つまり、そういう意味では住む場所に関してはどこに住もうが今の状況では全く売上に関係ありませんし、それなら衣食住にコストのかからない田舎にすんだ方が、同じ額の売上なら悠々自適に生活できるのは確かです。

しかし、私ははっきり言ってトップクラスのクリエイターではありません!しかし、場所に依存せずに収入が得られる方法を考えたり、調べたり、実践することはしてきましたし、今もしています。それらはトップクラスのクリエイターであるかどうかという問題ではなく、そういう知識やテクニックがあるかどうかの問題なので、紹介した文章にある

99%のその他大勢のクリエイターは、砂糖に群がる蟻のごとく、東京を始めとした大都市に群がるしかないと思う。

というのは、完全な間違いです。そして、そのような知識やテクニックを身に付けることは、特別なことではありません。今の時代ではある意味選択肢の1つとしては、自然なことです。問題があるとすれば、向き不向きはあるということくらいでしょう。

地方に移住することにメリットがあるクリエイター

この通りの意味ですが、東京にいるよりも他の場所にいた方がメリットがあるクリエイターもいるのは、当たり前のことです。単純に東京にいる時代から、ある地方からの仕事が多く、それなら移住した方が良いのではないか、という場合もあるでしょう。それに、どこかの地方が本当に好きで、その場所にも人にも惚れ込んで移住し、元々現地にいた方の輪に入り、共に暮らして田舎暮らしを満喫しながらクリエイティブな仕事をしているクリエイターの方も大勢います。

この場合もトップクラスのクリエイター云々の問題ではなく、仕事が多く来る地方があったのは縁の問題でしょうし、移住して現地の人と田舎暮らしを満喫して行えるかはコミュニケーションスキルの問題です。次は逆に、この方のいう1%に満たないトップクラスのクリエイターなら、地方に移住しても成功するのか検証してみましょう。

やはりトップクラスかどうかの問題ではない

これも先程書いたことと同じことです。東京という場所に依存しているトップクラスのクリエイター、東京で働くことにメリットのあるトップクラスのクリエイターの方なら、地方移住をしてうまくいくかはわかりませんし、そもそもしないでしょう。

例えば、日本でトップクラスのクリエイターと言えば真っ先に頭に思い浮かぶ方の一人、佐藤可士和氏。仕事で日本全国、世界中を飛び回るようなことはあるでしょうが、東京にある日本を代表する大企業のブランディングや経営からデザインの力で関わっていらっしゃるような方ですから、どう考えても東京にいた方がメリットがあるでしょう。

それに東京という文化や、そこにいる他のクリエイターとのつながりで、東京で活動すること自体に意味があり、成功しているトップクラスのクリエイターの方も大勢いるわけで、そのような人たちが地方の田舎に行っても成功するかは何ともいえませんし、そもそも行かないでしょう。

結局、地方でもやっていけるかどうかは向き不向きの問題

とどのつまり、地方で悠々自適に仕事がやっていけるかどうかは個人の適正の問題であり、向き不向きの問題です。トップクラスのクリエイターかどうかという問題では、全くありません。はっきり言ってしまえば、デザイナーの場合だとしても、デザイン力の問題でもないでしょう。

確かに今の自分の収入源を考えても、クラウドソーシングというシステムや、Skypeや他のSNSなど無料でTV会議のようなことができるシステムは、10年前には無かったものです。時代が違えば、デザイナーは東名阪のような大都市でないと仕事は無く、この方のいう1%未満のトップクラスの巨匠のようなクリエイターが、地方で悠々自適に制作していたような時代もあったのでしょう。しかし、その感覚のままであそこまで強烈な文章を書くことは他の弊害も生じてきます。

他者の選択肢を奪うような文章はある種の「呪い」である

私の愛読書の1つに内田樹氏の「邪悪なものの鎮め方」という本があります。これは生きていくなかで、「邪悪なもの」と遭遇したときどう対処すべきかということが書かれた、とても実用的な本なのですが、今回紹介した記事の文章のようなものも、「邪悪なもの」、ある種の「呪い」のようなものになり得ます。

一見すると、間違ったことを書いていない正しい文章で、クリエイターの地方移住は、1%未満のトップクラスのクリエイターは成功するが、その他の99%のクリエイターは失敗すると断言するようなニュアンスの強烈な文章です。しかも、BLOGOSという影響力もあるメディアに掲載されている記事ですから、このような文章を見た殆どのクリエイターは、「地方移住なんて無理なんだ。」と思う構造の文章になっています。内容が正しければ良いのですが、説明しているように完全に正しくありません。

そしてそれは、東京から地方に移住した方が悠々自適に仕事ができる可能性があるクリエイターの選択肢を奪うことになり、これは完全に「呪い」です。

ここではっきりとしておかないといけないのは私のスタンスですが、私は何もクリエイターに地方移住を勧めたいわけではありません。前に「イケダハヤト氏の高知移住に東京から愛媛へのUターンブログなので乗っかってみた」でも書きましたが、

東京にいた方がメリットがある人も入れば、地方に移住をした方がメリットがある人もいる。しかし、東京にいること以外の選択肢を知らずに、地方なら生活コストなどを抑えられもっと自分のしたい生活ができるのに、東京に居続けている人もいる。その人たちに、地方移住という選択肢があることを伝えてあげるのは重要だということです。

というスタンスで変わりありません。つまり逆にいうと、

「全クリエイターに東京よりも地方に移住した方が良い」と強要することも同じく「呪い」になります。

ですから、今の世の中は邪悪なものを避けて生活することはおそらくできません。SNSなどでそういうものは拡散してもいきますし。だからこそ、そういうものに遭遇した時にどうするべきかの対処法を知っていることはかなり重要になります。そうでなければ気付かないうちに他者によって選択肢を減らされたり、強要されてしまい、結果的に生存率が低くなってしまいます。

1番簡単な対処の方法はスルーすること、無視することなのですが、今回は自分にも関係のある地方のクリエイター問題で、内容があまりにも違ったので、このように長々とブログを書くことになってしまいました。

私の伝えたかったことは以上です。