クラウドワークスの記事を読んで痛感、今のクラウドソーシングはドン・キホーテ的だ
今日、何気なくFacebookのウォールを見ていると、こんな記事に友達がいいね!をつけていました。
フリーランスのデザイナーにチラシデザインを外注する利点とはそこでのコメントのやり取りが興味深かったのですが、この記事に書かれているフリーランスに外注する利点を読んでわかるように、実際にフリーランスをしているデザイナーやクラウドソーシングに興味のあるデザイナーが読んであまり良い気分になるものではありません。
ですからその記事をシェアした方のコメントや、そのコメント欄も、記事の見出しにあるように「フリーランスのデザイナーには短納期に対応できる方も多い」という前提で、低価格で短納期のものを作るにはフリーランスが使える!という印象を受けたのか、「クラウドソーシングってやっぱりダメだね」、「フリーランスのデザイナーが不幸になる」というような雰囲気が漂っていました。
確かにそういう側面があることは確かですが、それでクラウドソーシングはダメだ!デザイナーは登録しない方がよい!という流れに一気になってしまうのも違うだろ、と感じたので、実際にクラウドワークスを使って仕事もしている立場から意見を書いておきたいと思います。
求められるスキルも納期もさまざま
私はクラウドワークスで、ロゴのコンペに応募し続けるもまったく採用されない時期から、少しづつ採用され始めコンペではなく依頼の仕事もくるようになったことまで経験をして、このような記事にもまとめていますが、
クラウドワークスの契約ランキング10位に入りました!確かに、驚くほど安くて短納期の仕事は結構あります。しかし、それが大半かと言われるとそんなことはなく、デザイン会社に出すような価格ではないにしても個人でやっているフリーランスに出すのならまぁそんなものかな、という仕事もちゃんとあります。
大前提として、クラウドワークスの記事にもあるように、
急ぎの仕事からクオリティ重視の仕事まで、
様々なニーズに対応してもらうことができます。
と受注側のスタンスもさまざまで、それに応じて案件も色々とある、という事実は理解していただきたいと思います。
なぜ、低価格短納期なイメージがあるのか
ではなぜ、クラウドソーシングには低価格短納期なイメージがあるのか、ということになるのですが、世界規模のクラウドソーシングサービスを見れば、例えばアメリカの一流デザイナーのクオリティのままで価格は10分の1で発展途上国のデザイナーが仕事をする、ということも現実に起きていますから、デザインの価格破壊が起きて低価格化を招いているという現実はあります。
しかし、日本のクラウドソーシングサービスを実際に使って仕事をした経験から言うと、日本の案件は日本語という言葉の壁があるので、この記事で書いているようなチラシ制作の規模感で海外に住んでいる外国の方が低価格で受注するようなケースはほぼないと思われます。
ではなぜ、低価格で短納期になるのかを考えると、今の時代に求められるデザインと関係していると思います。
とりあえずデザインされたものが欲しい
またクラウドワークスの記事に目をやると、こんな言葉が最初にあります。
自作できればそれに越したことはありませんが、それなりに見栄えのするチラシを作りたいと思うと、やはり専門のデザイナーにお願いする方がよさそうです。
「それなりに見栄えのする」、デザイナーが聞くと怒りや憤りを感じる言葉ですが、今、特にこのようなデザインが求められている場合が多いことをクラウドソーシングを使っているとよく感じます。
それはなぜかというと、スタートアップバブルだったり、正社員の雇用が減り個人事業主になる人が増えたり、Webで簡単にお店ができたり情報発信ができたり、アプリが簡単にできたり、する時代なので、それらをアピールするためのツール、ロゴや名刺やチラシや簡単なWebサイトが大量に必要で、そのような案件がクラウドソーシングに流れているという印象があります。
つまり受注側からすると何の悪気もなく、本当に「それなりに見栄えのするデザイン」を作って欲しいわけです。それが1、2万でできるっていうんならお願いするけれど、それ以上かかるなら自分でWordで作るよ!そんなイメージです。
確かにこのような案件が大量にあるのが現在のクラウドソーシングの現状ですが、そういうわけではない価格や納期の案件もちゃんとあります。
高額の案件ができるデザイナーが少ないのはオフラインもオンラインも同じ
ここまで書いたクラウドソーシングの印象だと、クラウドソーシングでいくら仕事をしても自転車操業で儲からない!という考えになると思います。
しかし、クラウドソーシングを使って会社で働くのと変わらないくらいの額を稼いでいるフリーランサーもいれば、この記事で紹介しているような年収1500万円超のフリーランサーもいるそうです。
年収1500万円も? クラウドソーシングが変える「地方の仕事」 | 月刊「事業構想」2014年12月号クラウドソーシング上での仕事であってもなくても、良いクリエイターと仕事ができればまたお願いしたい!と思うのは普通のことです。その場合に個人事業主への発注やお金の問題は、受注側も発注側も面倒なものです(発注側からすると源泉徴収、受注側からするとちゃんと支払われるか、など)。
クラウドソーシングを使うと発注側は手数料を支払わなければならないし、受注側からすると手数料分ギャラが安くなるように感じてしまいます。しかし、その手数料を払うことによって、面倒なお金のやり取りをクラウドソーシングの運営会社の方で代行してもらっている、と考えてずっとクラウドソーシングでのやり取りを希望する方もいるそうです。
話を仕組みの話しから戻すと、このようにがっつり稼いでいる人もいるがそれは一握りのデザイナーやクリエイター、というのは何もクラウドソーシングに限っての話ではありません。オフラインで仕事をしていても、会社勤めで仕事をしていても、ガンガン稼いでいる!というデザイナーより、安い価格でどんだけ働かないといけないんだ…、と思いながら仕事をしている人の方が多いように思います。
実力がある人のところに高額の案件や条件の良い案件が行くことは当然のことなので、それとクラウドソーシングが悪いという問題をごちゃまぜにして考えるのはやめましょう。
問題は玉石混淆すぎること
ここでやっとこの記事のタイトルである「今のクラウドソーシングはドン・キホーテ的だ」という話になるのですが、では一体、今のクラウドソーシングの1番の問題点は何なのか?それは、
一流クリエイターも趣味レベルのクリエイターも、高額案件も地雷案件も、大量の情報として同じように一緒に配信されていることです。
つまり、格安商品からブランド品までが圧縮陳列で並べれているドン・キホーテと同じような状態になっているわけです。
これで何が困るかというと、発注者が良いクリエイターを探したり、受注者が良い条件の案件を探すのに時間がかかるということです。
これをクラウドワークスの記事にある“急ぎの仕事からクオリティ重視の仕事まで、様々なニーズに対応してもらうことができます。”と取るか、全部同じように提供されるからわかりづらい!と取るかは難しいところです。
ただクラウドワークス的にこの記事はプラスになるのか
今回紹介したクラウドワークスの記事は、別に悪いことを書いているわけではありませんし、間違ったことを書いているわけでもありません。
それに、まだまだクラウドソーシングというサービスを知らないけれど、低価格ならデザインをお願いしたい!潜在顧客にとっては良い記事かもしれません。
しかし、いくら事実とはいえ案件を制作するクリエイターあってのクラウドソーシング、それなりに見栄えのするチラシを短納期でクラウドソーシングならフリーランスのデザイナーが作れます!という主旨の記事はいかがなものなのでしょうか。
クラウドソーシング創世記であれば、低価格、短納期の案件ばかりでも仕方がないと思います。しかし、クラウドソーシングも日本でもスタートして数年が経ちました。これからはクラウドソーシング上で、日本中、世界中にいるクリエイターが自分の得意分野のスキルを活かして、場所に捕われずにユニットを組んで、大きな案件も回していくような時代にしていかなければ、クラウドソーシングは次のステップにはいけないように感じます。
そう考えると、「安いよー、早いよー!」と叩き売りをしているようにもデザイナーからすると感じられますし、まだそこを売りにするの?とも思ってしまいます。
地方に住んでクラウドソーシングも使って仕事をしているので、もっと面白い魅力的な場やサービスになることを期待します!