WEBデザインの必要性を文庫本はデザインする必要があるのかを通じて考えてみた
先日、ネットで見つけて気になった記事に「Webデザインが必要とされなくなる日」というものがありました。この手の記事は定期的に話題にはなるものですが、ポイントを簡単に引用してお伝えすると、
HTMLやCSSなどの基本知識はいつまでも必要かもしれないものの、それらを巧妙に駆使してWebサイトをつくり込んでいく時代は、ほぼ終わりかけている。
現在ではWordPressを使いこなすか、そのほかのWeb構築サービスを使うかという二択の、新しい時代が近づいている。逆にいうと、HTMLやCSSなどの基本的な知識でさえもブラックボックス化されてきているが、そのぶん画像や動画などの撮影から編集、加工の技術という、よりプリミティブな領域の重要性があがっているといえる
Webサイト全体の設計やデザインは、さほど重要でなくなる。ただでさえスマートフォンでしかWebサイトを見ない層が増えており、狭い画面で複雑なデザインは鬱陶しいだけになっている。ということは、即座に情報をつかみやすく、関心を引きやすい写真や動画のつくり方・使い方に再び焦点があたる時代へと、業界が変わりゆくのではないか。
WEBデザインはフォーマット化、テンプレート化されていく流れが確かにあり、スマートフォンの小さな画面で見るのだからデザインを行うところもそんなにないでしょう。それより、UPする記事や写真、動画の質を上げていこう。という話で、個人的にはとても納得できる話だと思います。しかし、勿論、こういう話題になると「そんなことはない!」というWEBデザイナーの方も大勢いますし、私も仕事が無くなっては困ります。
しかし、状況は冷静に判断し、対応していかなければならないので、WEBよりも先に同じような問題に直面した紙媒体は、どのような運命を辿ったのか考えてみましょう。
変形サイズから定型サイズへ
今から10年程前、私が大学生だった頃は、紙媒体のデザインの最後の良作のピーク時だったように思います。それ以降、色々なメデイアが紙媒体からWEBに主戦場を移したのはみなさんもご存知の通りです。
この最後のピーク時、特徴の1つとしてはとにかくフリーペーパーが発刊されまくっていました。それもフリーとは思えないような濃い内容で、印刷も凝っている。しかも判型もA4などの定型よりも、変形のモノがやけに多い時代でした。やたらとデカイものから豆本のような小さいものまで、定型とは違うそれらのフリペは、置かれていてもインパクトがあり集めたくなるので、洋服屋やレコード屋などを巡って集めていたものです。
しかし、これらのフリペには大きな問題があります。はっきり言って整理がしづらい。そして、読みやすくもない。という点です。クリエイターの遊び心が勝っていた時代の象徴かもしれませんが、これらのフリペは印刷コストも高いため、次第に数が減り、今では普通の定型サイズのフリペ以外はあまり見ることもなくなってしまいました。
定型のデザインをしていた時に感じた違和感
このような流れは仕事の中でもあり、インパクト重視の印刷物よりも、その分のコストをWEBに掛けるような流れになっていました。そんな時に、たまたまかもしれませんが、文庫本サイズの読み物のツールをデザインする機会が続いたことがあります。文庫本っぽくデザインするのがミッションですから、実際の文庫本の寸法をはかり、フォントの級数や行間、字間などを似せていきました。
そして、この作業の時に思ったことがあります。文庫本というフォーマット化されたものに似せるんだから、最初からそのフォーマットがあれば済むのでは?と。
文庫本をデザインする必要性はあるのか
出版社によって文庫本の中身のフォーマットは多少違いますが、勿論本のサイズは文庫本サイズで統一されています。そして、同じジャンル毎に色分けがされているなどして、本屋でキレイに並べられて、かつ検索性も高いように完全にフォーマット化されています。そして、今の時代は小説などよりもビジネス書が売れる時代ですが、それらも新書で出たものは、新書サイズで完全フォーマット化され、タイトルと中身以外は殆ど同じデザインで、本屋に並んでいることが普通です。
文庫本サイズや新書サイズの本で、表紙や中身のデザインが凝っていて、フォーマット化されていないものは殆どない。と言ってしまっても、概ね間違いではないと言えるでしょう。そして、このようなデザインのフォーマット化、テンプレート化が、WEBの世界でも顕著になっているということが、冒頭に紹介した記事の指摘しているところです。
WEBはフォーマット化に適したメデイアである
WEBで知りたいことはその殆どが情報です。そして、情報を効率良く取得しようと思うと、人間が読みやすい形、写真を見やすい形、その内容をシェアしやすい形を求めていくのは当然のことなので、文庫本と同様にフォーマット化していく流れは当たり前のことです。そして、各種SNSやポータルサイトもある程度習熟し、このような情報を扱うなら、伝え方をするなら、こういうデザインフォーマット(UI)にするのがい良い、ということがある程度パターン化されてきた時期が今なのではないでしょうか。
そして、そのタイミングで、WordPressなどのCMSによるサイトがWEBサイトの大きな割合を締め始めているというのは、必然的な流れのように感じます。おまけに本も大きな本よりも定型のものを、ハードカバーよりも、小さな文庫本の方が軽くてどこでも読めるように、WEBを見るのもデスクトップPCよりもスマートフォンやタブレットPCになっていることも、紙媒体と同じ流れです。
それでは、そんなフォーマット化、モバイル化する時代に、オリジナルのデザインで勝負してきたWEBデザイナーはどうすれば生き残れるのか。それも、紙媒体から学べるとことがあると思いますので、明日続きを書いていこうと思います。