【読書メモ】嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え
毎日少しづつ、内容を消化しながら読み進めていた1冊「嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え」岸見 一郎 (著), 古賀 史健 (著)を昨日、読み終えたので、その感想を書いておきます。
自己啓発本はたまに本屋で手に取ることがありますが、心理学の本を読んだのは今回が初めてです。後にも書きますが、日本ではアドラーよりも知られているフロイトやユングの考え方も、ネットで拾い読みをしたり、ユングが主人公の映画「危険なメソッド」(オススメです)を見た程度です。
というのも、ビジネス書や自己啓発本のように、読んですぐに使えるライフハック的なことが書かれているわけでもありませんし、1つの学問ですから、学ぶメリットがわからなければなかなか手を出しづらいものです。今回は、心理学を学ぶことで、生きていく上でどんなメリットがあるのかを中心に感想を書いていこうと思います。
なぜ心理学の本がベストセラーになったのか
本屋によく行く方であれば、「嫌われる勇気」を手に取ったことはなくても、目にしている方は多いはずです。私が住んでいる愛媛の田舎の本屋ですら、売上ランキングで1~3位くらいには入っていたので、かなり売れているのでしょう。
ここで、「嫌われる勇気」がどんな本なのか、Amazonの内容紹介を引用させていただきます。
「あの人」の期待を満たすために生きてはいけない――
【対人関係の悩み、人生の悩みを100%消し去る勇気の対話篇】
世界的にはフロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨匠とされながら、日本国内では無名に近い存在のアルフレッド・アドラー。
「トラウマ」の存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、
対人関係を改善していくための具体的な方策を提示していくアドラー心理学は、
現代の日本にこそ必要な思想だと思われます。
本書では平易かつドラマチックにアドラーの教えを伝えるため、
哲学者と青年の対話篇形式によってその思想を解き明かしていきます。
著者は日本におけるアドラー心理学の第一人者(日本アドラー心理学会顧問)で、アドラーの著作も多数翻訳している岸見一郎氏と、
臨場感あふれるインタビュー原稿を得意とするライターの古賀史健氏。
対人関係に悩み、人生に悩むすべての人に贈る、「まったくあたらしい古典」です。
なぜ心理学の本がここまで売れたのか、それはまず「嫌われる勇気」という誰も何か惹かれてしまうタイトルのせいでしょう。誰でも他人の目を気にして生きている、そんなことは気にせずに嫌われる勇気があれば、もっと自由に幸せに生きていけるのではないか、そんな風に思ったことはあるはずです。
そして、もう1つのポイントはAmazonの内容紹介にも書いてある哲学者と青年の対話篇形式というこの本の書かれ方のおかげでしょう。読者は誰もが青年のような気持ちでアドラー心理学とは何か、自由に生きていくとはどういうことなのかを、哲学者との対話に時には悩み、苦悩しながらも学んでいけるというわかりやすい仕組みになっています。
少しボリュームのある本ですし、サクサク読むというよりは、青年がそうしたように、時には時間をおいて自分で考え、読み進めてはまた考えと進めていった読書の時間でしたが、とても有意義な時間を過ごすことができました。
アドラー心理学とは何か
昨日、読み終えたばかりなので非常に難しいのですが、それを端的に表す1文を本書から引用するならば、
アドラー心理学は、勇気の心理学です。あなたが不幸なのは、過去や環境のせいではありません。ましてや能力が足りないのでもない。あなたには、ただ「勇気」が足りない。いうなれば「幸せになる勇気」が足りていないのです。
ということになるのではないでしょうか。そして、ポイントをわかりやすくまとめている書評のブログがあったので、そちらを引用させていただくと、
- 過去の「原因」ではなく、今の「目的」を考える
- 人間の悩みは、全て人間関係の悩みである
- 他者の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させない(課題の分離)
- 自分の主観によって「わたしは他者に貢献できている」と思えること(横の関係)
- 「いま、ここ」を生きる
これらがポイントになります。1つ1つは何となくわかると思いますが、これらを実行しようと思うと確かに勇気が必要なことも想像できるのではないでしょうか。
心理学を学ぶメリット
本書の詳細な内容については、やはり読んでいただくのが1番ですし、心理学的な視点でしっかりと書かれた書評も多いので、そちらを見ていただいた方が良いかと思います。ですから私としては、この本を読んで感じた、フリーランスで仕事をするうえで心理学を学ぶメリットについて書いておきます。
会社員以上にメンタルのケアは大事
フリーランスは自由と引き換えに生活にしろ、売上にしろ不安定さがつきまといます。そうするとどうしても不安な気持ちも大きくなり、せっかく独立したのに、会社員の時のストレスとは違う、不安からのストレスがかかってしまいます。そんな時に1番大切なのが気の持ちようです。それ次第で同じ状況や環境であっても、フリーランスの見える景色は違ってきます。
例えば、私はクラウドソーシングのロゴのコンペによく応募します。勿論コンペですから、採用されることもあれば、選ばれずに1円もお金が入ってこないこともしばしばあります。良くない結果は引きずらず、切り替えて作業するべきだと頭ではわかっていますが、結果のメールを見て他の作品が選ばれていると、クラウドソーシングのコンペ以外の仕事も全て上手くいかないのではないかという気になってしまい、フリーランスになったこと自体、本当に良かったのだろうか…と自分の選択に自信も持てなくなってしまいます。
逆に選ばれると、やっぱり田舎でクラウドソーシングを軸にやっていこうという考えは正しかったんだ!頑張ろう!という気になり、天気が良い日に自転車で走っていると風も気持良く、本当に田舎でフリーランスで自分のワークスタイルを作るということは素晴らしいことだ!と思えてきます。
金額だけでみればせいぜい2万くらいの額が入ってくるかこないかの話なので、勿論仕事としては少ない額では無いし大切なことなのですが、それで人生が何か変わってしまって、自分の決断は間違っていたのか!?と苦悩するほども額でもありません。しかし、このような些細なことでメンタルの状態は大きく変わってしまいます。そして、良くないメンタルの状態で仕事をして上手くいくことはまずありません。
そんな風に気持の浮き沈みが激しく、色々なことに支障が出ること無く、良い状態のメンタルに保っておくための技術、それがこの本に書かれているアドラー心理学から学ぶことができました。気の持ちようとは言っても、メンタルを良い状態に保つことは学習することができて、スキルとして身に付けられることです。デザイナーがフリーランスになるにあたって、デザインだけでなくお金のことや経営のこと、営業のことも学んだ方が良いように、心理学を学ぶことも大きな1つの武器になり、その中でもアドラー心理学は勇気の心理学と言われるように、自分の表現を糧に生きていく人に取っては特にためになるスキルが詰まっています。
まとめ
アドラー心理学のポイントでも紹介した「いま、ここ」を生きるという考え方、それはフロイトのような人生は1本の線であり物語であるという考えではなく、人生は一瞬一瞬の点の連続であり、刹那の連続である。そして、その今という瞬間を真剣に生きること(本書の中ではダンスするように生きると表現されています)が人生に嘘をつかない生き方だという考えです。
私も物語的に人生を考えると、まさか東京から実家に戻ってフリーランスで働くことになるとは夢にも思いませんでした。しかし、今の状況も自分が選択したものであり、それは刹那の連続を自分なりにではありますが真剣に生きた結果だと考えると合点がいくような気がします。
考え方や気の持ちようで景色が変わるのは事実ですから、興味を持たれたかたは「嫌われる勇気」、読んでみてはいかがでしょうか?